pythagoras（prototype）

ピタゴラス（プロトタイプ）

制作：2025年

作家コメント
「pythagoras（prototype）」は、ピタゴラスの定理（三平方の定理）を応用した作品です。直角三角形の3辺の長さの関係において、2つの小さい正方形の面積の和が、大きい正方形の面積と等しいという定理をヒントに制作しました。絵画の画面は本来、水平垂直があり、それを正しく展示するというような常識がありますが、この作品は、むしろ定理や法則に従うことで、傾きが生じることを自然なものとして承認するといった、枠組みの中で枠組みを越えるということを示したシリーズの一つです。

バラバラに描いたはずの3枚の絵には、なぜか関係性やつながりや結びつきがあるように感じます。僕には何故か、大・中・小の正方形の関係が、父と母に手を繋がれて、ぶら下がっている子供の、家族のひとときの姿のように映ります。また中央に生じる直角三角形の空隙の奥には、何か語られない思い出があって、それを覗き見る（あるいは想像するための）空洞のように思えます。

門田 光雅（かどた みつまさ）プロフィール
1980年静岡県生まれ。 絵画の地と図への関心や、伝統的なメディウムの限界への挑戦、 色彩と筆致の相対的な関係性への模索の中で、美術の文脈の先にある絵画表現の新たな地平を探求している。そのスタイルが評価され、2019年にはMoMAのヤングパトロン協議会（旧ジュニアアソシエイツ）との共催でNYのリンカーンセンターにて個展を開催。近年では、「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」（ポーラ美術館 2024）、「絵画のミカタ 5人のアーティストとみる群馬県立近代美術館のコレクション」（群馬県立近代美術館 2020）、「The ENGINE 遊動される脳ミソ 小野耕石×門田光雅」（セゾン現代美術館 2019）などに出品。セゾン現代美術館に作品が収蔵されている。