Einstein

アインシュタイン

制作：2024年

作家コメント
2024年に開催したM画廊の「TIME CRYSTAL」展に出品した作品です。アインシュタインは、かつて常識とされた「神が作った絶対的な時間や空間は不変である」、という考え方に異を唱えて、時間も空間も柔軟な捉え方ができるという、新しい視点があることを示しました。それが後の「相対性理論」の発見に結びつきます。アインシュタインは、スピノザの「汎神論（pantheism）」の考えに賛同していたと聞いたことがあります。汎神論は、人格的な神は認めず、pan（全て）theos（神）で、「宇宙の自然法則の中にこそ、神は宿っている」という古代からの思想です。日本語の「汎」は「水面に浮かぶ」というような意味があるそうで、流動的で柔軟な物事の捉え方は、そのような視点や哲学の中から生まれてくるのかもしれません。

またアインシュタインは「想像力は知識よりも重要で、知識には限界があるが、想像力は世界を包み込む」という言葉を残していますが、想像力は、知識や常識を、あるいは物理や光の速さをも超えて、私たちが本来、辿り着けない場所にまで私たちを導きます。この作品を出品した展示タイトルの「TIME CRYSTAL」は、相対性理論をヒントに近年、研究をされ始めている現象のようで、時間が結晶化するような架空や空想を超越した場所に、私たちが足を踏み込み挑み始めたという一つの証拠なのかもしれません。

門田 光雅（かどた みつまさ）プロフィール
1980年静岡県生まれ。 絵画の地と図への関心や、伝統的なメディウムの限界への挑戦、 色彩と筆致の相対的な関係性への模索の中で、美術の文脈の先にある絵画表現の新たな地平を探求している。そのスタイルが評価され、2019年にはMoMAのヤングパトロン協議会（旧ジュニアアソシエイツ）との共催でNYのリンカーンセンターにて個展を開催。近年では、「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」（ポーラ美術館 2024）、「絵画のミカタ 5人のアーティストとみる群馬県立近代美術館のコレクション」（群馬県立近代美術館 2020）、「The ENGINE 遊動される脳ミソ 小野耕石×門田光雅」（セゾン現代美術館 2019）などに出品。セゾン現代美術館に作品が収蔵されている。